おにぎり短編集
第2章 カレーライス
***
時刻はもうすぐ、23時をまわろうとしている。
机に置いたスマホが震えた。
「はいはい、待って待って……」
そう言いながら、慌ただしく髪を拭いて、通話ボタンをタップする。美容液を染み込ませていると、スマホの向こうから、小さな声が聞こえた。
「おい、もしもし」
「はいはーい、ちょっとまって」
使っていなかった小指でスピーカーをタップして、両手の自由を得る。ほっと一息ついたところで、美容液を染み込ませることに集中する。
「何してんの?」
「帰って、風呂上がったところ」
言いながら、今度は乳液を手に取った。何を話すでもない時間が、数分と過ぎる。
遠距離になってから、こうして何か用事があるでもなく、電話をすることが増えた。付き合って3年ともなれば、沈黙が、苦痛に感じることもない。
昔は沈黙をおそれて、お互いが不格好に話を続けて、楽しんでいたりもしたが、今となっては繋いだままお互いが静かな時間が妙に心地よかった。
時刻はもうすぐ、23時をまわろうとしている。
机に置いたスマホが震えた。
「はいはい、待って待って……」
そう言いながら、慌ただしく髪を拭いて、通話ボタンをタップする。美容液を染み込ませていると、スマホの向こうから、小さな声が聞こえた。
「おい、もしもし」
「はいはーい、ちょっとまって」
使っていなかった小指でスピーカーをタップして、両手の自由を得る。ほっと一息ついたところで、美容液を染み込ませることに集中する。
「何してんの?」
「帰って、風呂上がったところ」
言いながら、今度は乳液を手に取った。何を話すでもない時間が、数分と過ぎる。
遠距離になってから、こうして何か用事があるでもなく、電話をすることが増えた。付き合って3年ともなれば、沈黙が、苦痛に感じることもない。
昔は沈黙をおそれて、お互いが不格好に話を続けて、楽しんでいたりもしたが、今となっては繋いだままお互いが静かな時間が妙に心地よかった。