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おにぎり短編集

第2章 カレーライス

「食事、作って待っててくれる人がいるのは、嬉しいことだよ」

一通りのお手入れを終わらせて、手を休ませていると、不意に彼が口にした。

「……同棲、したい?」

「そりゃあね」

再び、沈黙が訪れる。なんとなく、お互いがお互いのことを考えていた。
一緒に暮らすとしたら……
どちらかが、どちらかの生活をやめなくてはいけない。

最近、友人が婚約して、同棲を始めたことを思い出していた。
それを聞いてから、左手の薬指に、指輪をしている女性に目がいくようになった。

2人で生活するために、どちらかが何かを諦めて、面倒だと思える手続きを全部踏んで、その指輪をはめることができている。そんな女性は、世の中に当たり前のようにたくさんいる。

今のわたしにとって、少なくともそれは、尊敬に値する。
今のまま、なんとなくもう少しズルズル付き合って、その時が来たら……なんて考えているわたしにとっては。

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