おにぎり短編集
第3章 終電
深夜0時半。終電を完全に逃した時間に、もう2つ、追加で送信する。
さっきより震えた指で、送信ボタンをなぞる。
『始発で、帰ることに』
『なりました』
彼は明日仕事なはず……。
後ろめたさが増して、寝ていてくれと願った。
しかし、十分な間を空けて送った瞬間に既読がつき、ポケットにしまう前に、すぐにスマホが振動する。
『タクシーで帰って来な』
開いたまま一瞬、悩んでいると、すぐに追い討ちをかけるように追加でメッセージが飛んできた。
『今すぐだよ』
これはもう……絶対だ。みんながぐったり盛り上がっているところを、こっそりと抜け出して、表でタクシーをつかまえた。