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おにぎり短編集

第3章 終電

ピリリっとした空気に背筋が伸びる。
下手な動きをしたら、どうかしてしまうんじゃないかと思って、わたしの動きがぎこちない。

「た、ただいま」

恐る恐る、上目遣いに彼のことを見上げる。彼の目はしっかりとわたしを捉え、見下ろされていた。

「何時だと思ってんの? 僕が許すのは終電までだよ?」

静かなはっきりとした声が、上から降ってくる。
伸ばしきった背筋が更に伸びて、固まった。

「で、何時だと思ってんの?」

鋭い眼光が、静かに怒りを伝えてくる。
……家を出る前に、約束はしていた。わたしだって大学生だ。そこのところは彼も理解してくれた上で、遅くても終電までには帰ること、としていた。

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