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おにぎり短編集

第3章 終電

約束破ったその上に、わたしは自分が怒られることしか考えていなかったから。
彼のわたしに対する心配は、家を出る前の約束で終わっていたわけではない。わたしが飲み会の間、続いていた。
……彼の気持ちへの、想像力を欠いていた。

これには、俯くしかない。
しかし、彼はそれを許さない。
両手を伸ばして、わたしの頬を支えると、顔を持ち上げてわたしの目を覗き込んだ。

「俺は、君を心配していたんだよ。それくらいは分かって欲しかった」

一人称が俺になったことで、彼の内心で湧いている怒りを察した。
それだけ言うと、ぱっとわたしの頬から手を離して、寝室へと向かう。わたしは彼の背中を追った。

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