おにぎり短編集
第4章 タイトル未定
その話に少し熱が入って落ち着いてきた頃、そろそろお開きにしようかという流れになる。
さっと伝票を取り、歩いていく先輩の後ろを着いて行った。会計でわたしが財布を取り出す前に、その動きを手で制する。
「いいよ、大丈夫」
「……いつもすみません」
言いつつ、申し訳ないと思いながら、いつもお世話になってしまう。
居酒屋を出ると、涼しい風が頬を撫でていった。
店内の混雑から生まれる熱気と、酒を飲んだ熱が、少しずつ取り払われていく。
ふらつくほどではないけれど、それなりに酒を飲んではいた。
酔っていた気分が、冷めていく少し前。
駅の方向へ歩く。
駅に着けば違う路線で帰るわたし達は、さよならをして、明日、また仕事場で顔を合わせる。
改札をくぐった後、『また明日』わたしがそう言いかけた時、先輩が呟くように言った。
「二次会、しない?」
……これまでになかった提案に、目を見開く。
たくさんの人が、わたしたちを追い越して、帰りを急いでいた。
わたしの驚いた顔を見て、先輩は目を伏せる。
その今までに見せたことのないような表情に、釘付けになっていた。
寂しさとは違うような、言葉にできない感情を漏らしている先輩は、初めてだ。
「俺の家で。なんかこう……もう少しだけ、付き合ってほしい」
自分の家がある路線の方向に向いていた足が……先輩の体に向き直る。
酔った頭では、考えることができなかった。お互いの恋人というストッパーがあるにしても、2人きり、先輩の家で二次会をすることが、何を示すのかということを。
少なからず警告音は頭の片隅で鳴っていた。だけれどそれが聞こえなかったーー無視したのは、わたしの中の好奇心が強く出ていたからだと思う。
先輩の方へ1歩、歩み寄っていた。
顔を上げた先輩と、目が合う。少し口角を上げると、わたしに尋ねた。
「……酒、買って行こう。今、何なら飲める?」
「じゃあ、サングリアをロックで」
……これが、二次会了承の合図だった。
さっと伝票を取り、歩いていく先輩の後ろを着いて行った。会計でわたしが財布を取り出す前に、その動きを手で制する。
「いいよ、大丈夫」
「……いつもすみません」
言いつつ、申し訳ないと思いながら、いつもお世話になってしまう。
居酒屋を出ると、涼しい風が頬を撫でていった。
店内の混雑から生まれる熱気と、酒を飲んだ熱が、少しずつ取り払われていく。
ふらつくほどではないけれど、それなりに酒を飲んではいた。
酔っていた気分が、冷めていく少し前。
駅の方向へ歩く。
駅に着けば違う路線で帰るわたし達は、さよならをして、明日、また仕事場で顔を合わせる。
改札をくぐった後、『また明日』わたしがそう言いかけた時、先輩が呟くように言った。
「二次会、しない?」
……これまでになかった提案に、目を見開く。
たくさんの人が、わたしたちを追い越して、帰りを急いでいた。
わたしの驚いた顔を見て、先輩は目を伏せる。
その今までに見せたことのないような表情に、釘付けになっていた。
寂しさとは違うような、言葉にできない感情を漏らしている先輩は、初めてだ。
「俺の家で。なんかこう……もう少しだけ、付き合ってほしい」
自分の家がある路線の方向に向いていた足が……先輩の体に向き直る。
酔った頭では、考えることができなかった。お互いの恋人というストッパーがあるにしても、2人きり、先輩の家で二次会をすることが、何を示すのかということを。
少なからず警告音は頭の片隅で鳴っていた。だけれどそれが聞こえなかったーー無視したのは、わたしの中の好奇心が強く出ていたからだと思う。
先輩の方へ1歩、歩み寄っていた。
顔を上げた先輩と、目が合う。少し口角を上げると、わたしに尋ねた。
「……酒、買って行こう。今、何なら飲める?」
「じゃあ、サングリアをロックで」
……これが、二次会了承の合図だった。