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おにぎり短編集

第1章 あいす

その場で湧き上がる怒りを、ギリギリのところで抑えるようにして酒を飲んで帰ってきたら、その感情ごと、家のトイレで吐いた。

泣きながら嘔吐を繰り返し、トイレに籠るわたしの背中を、彼はゆっくりとさすった。
胃から込み上げてくる酸っぱさに、気持ちの悪さは相乗していく。

『飲みすぎた』と言うには、沈んで帰ってきて、顔色が悪いわたしを心配してくれていた。でも、その彼の気持ちを受け止める余裕がなかった。

無言のまま全てを吐ききったあと、トイレから出て、辛うじてシャワーを浴びて、歯磨きをして……。
倒れ込むように布団に入った。
布団に倒れた後のことは、一切覚えていない。
ぷっつりと糸が切れたように眠って、起きた時にはちゃんと毛布を被っていた。早すぎる朝だった。

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