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官能マシン

第1章 官能マシン

 あてもなくぶらついているうちに、いつの間にか一軒の電気店に入り、電話機売り場の前に立っていた。

  *

「――お客さま、どうでしょうか?」

 店員が愛想笑いを浮かべながら説明を続けている。

「まだ発売されたばかりの新商品なんですが……。実は、まだ試験段階の商品でして。もしモニターをしていただけるのでしたら、そのまま無料でご提供できますが……」

 信一は、店員の顔をぼんやり眺めていた。
 店員は引きつった笑顔を浮かべながら、恐る恐る信一の顔色をうかがっている。

 どうやら、さっきからいろいろ説明していたらしい。

 しかし、信一はほとんど聞いていなかった。
 今さら「聞いてませんでした」とも言えない。

「……う、うん。ただなら、使ってみてもいいぞ」

「ありがとうございます!」

 店員は、ほっとしたような顔をした。

「すぐ使えるようにセットしてあります。一週間後くらいに、モニターのご報告をいただけるとありがたいんですが……」

 そう言ってから、店員は慌てて付け加えた。

「いや、もちろん、ご都合のいいときで結構です。気が向いたらで……。とにかく、よろしくお願いいたします」

 随分と腰の低い店員だ。

 信一は、手渡された新商品を持って店を出た。

 しかし、歩き始めてすぐに気づいた。

 この携帯電話、いったい何に使えばいいんだ?

電話をかける相手が思い浮かばない。

もちろん、自分に電話をかけてくる相手もいない。

 そう考えると、せっかくもらった新商品なのに、かえって空しくなってきた。

「こんなもの……」

 信一は携帯電話を見つめた。

「もともと携帯電話なんて、遊び人のおもちゃだ!」

 吐き捨てるように言って、信一は歩き出した。

  *

 ピピーピピーピピー。

 職場の机でパソコンを打っている信一のそばで、例の携帯電話の呼び出し音が鳴った。

「あ、あれー? おかしいわ。メッセージが入ってない……」

 慶子が首をかしげている。

「壊れたのかしら? 買ったばかりなのに……」

 すると、またベルが鳴った。

 ピピーピピーピピー。

「あっ、今度はちゃんと入ったわ」

 慶子はそう言うと、いつもの快活な表情に戻った。

 そして午後五時。

 終業のベルが鳴るのと同時に、

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