🕯️悪夢の神様🕯️
第22章 それぞれの望み
「これは…酷いですね……」
彼女は夏でも長袖のワイシャツかカーディガンを羽織っていた…
極度の寒がり――――…と、言うわけではなさそうだったが…そう言うことか…と、納得した。
「そのアザって…タバコの…」
「これは――――…一番上の姉のタバコの押し当て…この引っ掻き傷は二番目の…この青アザが下の姉の…
すごいでしょ?全部覚えてるの――――…いつ、どこで…誰がやった傷か…私は全部覚えているのに…
あの人たちは覚えていない――――…
“汚いから隠せ”って…」
彼女は傷やアザを撫でながら…姉たちの虐待を呟く――――。
そして、袖を戻すと…私の目の下にあるクマを見て……フッと笑う。
「藤橋さんって……不登校だったよね?その――――…何かしらの転機があったの?
三年の変な時期に登校してきたから…気になってたの」
転機――――…と、言われパッと…
皇輝さんの顔が思い浮かんだ…
「――――あ…いや………」
頭のなかで「いやいや!違う、違う」と彼の顔を消して上田さんに向き合う。
「小学校卒業と同時に……逃げました――――
私は…家族から逃げて――――…祖母の家に行って…でも、そこから引きこもっちゃって…」
「それでも、家族からは…逃げたんだ――――凄いね」
上田さんは安堵したような…寂しそうな顔で私を見た。
「私は――――逃げられない…」