―短冊に託したプロポーズ―
第1章 ―短冊に託したプロポーズ―
――流星を自転車の後ろに乗せてから、私もサドルに股がって乗り込む。
「お客様。ヘルメットはちゃんと被りましたか?」
「はーいっ」
「それでは間もなく、保育園駅を出発致します」
「はーいっ」
「次の停車駅は、スーパーマーケットです。安全運転を心がけておりますが、場合によっては急な停車をすることがありますので、走行中は手すりにしっかりとお掴まり下さい」
「はーいっ」
流星は、電車やバスといった、公共の乗り物が大好き。こうして乗り物ごっこをしてあげると、ものすごく上機嫌となり喜んでくれる。
表向きで『流星のため』とか言っている私も、何気にノリノリで楽しんでいるんだけどね。
「では、出発しんこーうっ!」
「わぁーいっ! おかあさん、はやいはやーいっ!」
「あ、コラッ。そんなに笹を振り回したら壊れちゃうってば」
「わーいわーい!」
「ふふっ。たくもーう」
裕一、今のうちに流星の笹を見てあげて。もしかしたら、終点の自宅駅に着く頃にはボロボロになってるかもだから。
七夕を過ぎたら、じきに流星の誕生日もやってくる。
ねぇ……。もし今度の七夕で、短冊に流星の欲しい物を書いたら、裕一も一緒にお願い事を叶えてくれる?
プロポーズや天使だって叶えたんだから、余裕でしょ?
流星の伝統的な日なんだから、お願いね。
裕一。
離れていても、
これからも一緒に……
願い事を叶えていこうね。
「あっ、間もなくカーブに差し掛かりまーす。ご注意くださーい」
「はーいっ!」
―短冊に託したプロポーズ―
END