―短冊に託したプロポーズ―
第1章 ―短冊に託したプロポーズ―
*
「ねぇ……。裕一の病気、本当に治るの?」
理沙は今日も俺を疑ってくる。
「治るに決まってんだろ。髪を犠牲にしてまで治療受けてんだぜ。な?」
だから、俺は今日も『嘘』でかわす。
被っているニット帽を取り、スキンヘッドを見せつけて、あっけらかんと振る舞う。
「そうは言うけど、もう何ヵ月も入院してるじゃない」
「大丈夫だって。進歩した今の医療技術をナメんなよ」
不安げな理沙を安心させるため、嘘をついて胸を痛めても、平気な顔をし続ける。
そうしないと、ダメなんだ。だって……
『本当は治らない』上に、
『持ってあと一年』という最悪な期限もあるなんて知られたら、大切な恋人を酷く悲しませてしまう。
だけど……俺が急にいなくなっても同じだ。いや、同じどころか、悲しみに拍車がかかってしまうかもしれない。
じゃあ、一体どうすればいいんだよっ……!
「…………っ、ほら。面会時間終わるぞ」
嘘をついているのが、もう限界だ。声をあげて泣きたくなってきた。だから、時計に助けを求めた。
「うん……。また、来るからね」
理沙は柔らかな手で、俺の手を包み込むように握る。それを、名残惜しくスルリと離すと、病室を後にした。
その直後――
「っ、ぐっ……!」
耐えていた副作用の吐き気に強く襲われた。
そばに置いてある洗面器を引ったくり、顔を突っ込む。思いっきり吐き出したいのに……実際には、唾液しか出てこない。