先輩!彼氏にしてください!
第9章 青春の文化祭
「ほのか先輩っ……? え、な、泣くほど痛いですか?」
知らぬ間に頬に涙が伝っていることに気付いた私は、もう一方の手を胸の前でギュッと握った。
谷川くんが、ちゃんと私を見て、私に話し掛けてくれている。
それだけのことがこんなにも嬉しくて……
「先輩、何か言ってください! 病院でも保健室でもどこでも連れて行きますからっ……」
「痛い…っ……」
「腕ですか? 折れてたりとか───」
「──── 腕じゃないっ…」
「────────────」
「……誰もいないところっ……連れてってっ…」
バカみたいなわがままを言うと、谷川くんは少し目をぎらつかせる。
そして、ゆるく微笑むと少ししゃがみ込んで私の膝の裏に腕を通した。
「………お安い御用です」
「きゃっ………」
突然、風邪で倒れた時と同じように私のことをお姫様抱っこした谷川くんはそのまま人目を憚ることなく、駆け抜けていく。
ドキドキと胸が高鳴って、苦しい。
あっという間に、図書室に着いた谷川くんは、誰もいないことを確認すると、そのまま私のことを下ろしたのと同時に本棚に私を追いやると、いつものように「キスします」と断って強引に唇を塞いだ。