先輩!彼氏にしてください!
第1章 彼氏にしてください!
そんな運命あってたまるか。
「ちょっとっ…やめ…て…!」
「やめません…!」
「やめない…とっ…一生…っ…あんたと話さない…から!うわぁっ…」
突然に解放された私は、持っていた箒をまるで杖のようにして体重を掛けながら、息を整えた。
なんなんだ…こいつホント…!
「っ……一生話さないなんてっ…そんなの絶対ヤダ!」
唇を震わせている谷川くんをキッとみつめる。
急に駄々っ子のように叫び出した谷川くんに呆れてものも言えない。
そして、谷川くんの背後にある絵を再び見上げる。
納得した…よ。天才は変人が多いとはよく言ったものだ。
だって、やっぱりこの絵を描いた彼は本当に天才だと思うし、それでいて本当に本当に変人だと思うから…────
「ちょっと…一回そこに…おすわり」
近くの椅子を指差すと、谷川くんは従順にもサッと椅子に座った。
そしてさっきまで唇を震わせていたのに、今度はなんだか嬉しそうにしている。
段々彼の頭に耳と、お尻には尻尾が生えているように見えてくる。
息が落ち着いた私は、あのね!と言いながら箒の柄を谷川くんに向けた。
「急に抱きついてきたりしないで! しかもあんな強い力で!」
「だって…ほのか先輩が僕を誘惑してきたんじゃないですか」
「してないから!!」
キツく言い返すと谷川くんは両手に拳を握りながら俯いた。