先輩!彼氏にしてください!
第2章 ギトギト青春ライフ
放課後。
私は辺りを気にしながら廊下を歩く。
谷川くんに見つからないように。
どうしてあの子のせいで私がこそこそしなきゃいけないのか、釈然としないけど見つかったらそれはそれでめんどくさいし、そのままそっと図書室へと入り込んだ。
「あっつ……」
落ち着く匂いと同時にどう考えても本に悪そうな熱気に思わず声を漏らす。
そういえば、この図書室空調が壊れてるんだった。
周りを見渡しても誰もいない。
司書さんも、裏の司書室で涼んでいるのか、受付にはベルと「用がある時は鳴らしてください」というメモが置いてある。
学校という施設でありながら、勉強する場所がこんな状態なのってどうかと思うけど……
呆れながら、私は本棚の奥へと進む。
暑くて環境は最悪だけど、誰もいないのは気が楽でいい。
授業の課題で使いたい資料を探し求めながら、いくつもある棚を見て回っていると、途端に人影が目の前に現れて、私は「わっ!」と声を上げた。
「なっ…!」
「先輩、危ない!!」
なんで谷川くんがここにいるの。
しかも足音も立たず、不気味で仕方ない。
とにかくびっくりしすぎて勢いよく後ずさったせいで私は後ろの本棚に体をぶつけた。
それと同時に途端に谷川くんに抱き締められて身が凍る。
「っ……ちょっ…」
声を上げるのと同時に、バラバラバラと本棚から本が落ちてきて、それが谷川くんの体に当たっていた。
ひとしきり、本の雨が止むと、谷川くんは慌てた様子で少し体を離した。