先輩!彼氏にしてください!
第1章 彼氏にしてください!
野菜ジュースのパックの周りに、ツー…と結露した水滴が垂れる。
正直、その水滴でもいいから飲みたいほど、私は喉が渇いてる。
「変なもの、入れてないよね」
「あー…なるほど、そういう手があったのか」
うーんと顎に手を当てて唸る彼に、引き攣った顔を向けながら私はその野菜ジュースを掴んだ。
「あ、先輩っ…」
「どーも。でももう来ないで」
「…………」
「メーワクだから」
そしてちょうどよく、チャイムが鳴る。
いまのキマッたんじゃない?
まぁ飲み物くれたのはありがたいけど。
てか、お金くらい渡しておくべきだっただろうか。
あとでなんか言われたらめんどくさいし、カシは作りたくないし……
まぁでもとりあえず喉を潤すことが先だ。
席に座った私はもらった野菜ジュースにストローを刺して、中の液体を体へと流し込んだ。
「……はあ……」
「本当、愛されてるねー、ほのか」
「…………あんなの愛じゃない」
背後から面白がるように話しかけてきた麻理に返事をしながら、パックについた結露をなぞる。
「いや、愛でしょー。歪んだ愛だけど」
「………………はぁ」
「名前、なんだっけ、えーっと谷…」
「谷川」
「あーそうそう、谷川くんだ。2年生だよね? 今年転校してきたんでしょ? なんであんなに、ほのかのこと気に入っているんだろうね」
それは私が一番知りたい。