先輩!彼氏にしてください!
第1章 彼氏にしてください!
谷川……なんちゃら。
下の名前は忘れてしまったか、そもそも名乗ってもらってないかもしれない。
麻理の言う通り、一つ下の学年で今年転入してきたらしい。
朝、校門の前での待ち伏せが始まったのは、入学式やら始業式を終え、ようやく授業が始まるって頃だった。
身長が高い上に、あんな前髪長くて目見えないようなやつに、突然「ほのか先輩!」と叫ばれて手を握られた瞬間の恐怖を私は忘れない。
それから、谷川くんはホント神出鬼没。
もっと慕ってくれる可愛げのある後輩感を出してくれればいいのに、なんというか彼は……やっぱりキモチワルくて、まさにストーカーって感じだ。
色々と反芻しながら、机の上に置いた野菜ジュースを見つめる。
ホント、なんで私が喉渇いてるって分かったんだろう。
───────── ほのか先輩、いつもこれ飲んでますよね!
思わずみんなに不審がられないように辺りを見回して、変なカメラが仕込まれてないかを確かめる。
もちろん、ここは学校な訳だしそんな事してこないとは思うけど……。
だめだ。
あんなよく分からない子の事を考えて授業に集中出来ないなんであってはならない事だ。
気を引き締めた私は、野菜ジュースを机の端に置いて、再び始まった授業に没頭した。