先輩!彼氏にしてください!
第7章 天才の苦悩
早坂先生も言っていたけど、あの絵を世に出さないのはやっぱりもったいない。
谷川くんに才能があることは明らかな事。
それはもう才能がある人の使命だ。
それなりに理由があるならまだしも、『私を晒したくない』なんて、そんな理由でコンクールに出さないなんて、なんか私のせいみたいで気分悪いし。
「コンクールで受賞とかしたら、かっこいいなぁって思ってたのに」
まるで幼稚園生に嫌いな食べ物を食べさせるかのような、そんな分かりやすい揺さぶり。
でも……
「えっ……んんん…っ」
何故か谷川くんには効くんだよな……
「あの絵ならきっと何かしらの賞取れるのに……でも出さないなら関係ないね」
「………………」
「……じゃあ、話終わったから、帰───」
「──── ちょっ…ちょっと待ってくださいっ…!」
谷川くんの体をすり抜けて、部屋を出ようとしたら、谷川くんが最後で大きく声を上げたので、『かかったな』と思いながらも無表情で谷川くんに向き直った。
「なに……?」
ぷるぷると震えながら、拳を握って俯いている谷川くんをじっと見つめる。
そしてしばらくした後、谷川くんは、はぁ…とため息を吐いて脱力すると私に近付いた。
「ほのか先輩はっ……本当にずるいです」
「なにが…?」
「そうやって言えば、僕が意見を変えると思って……っ…」