先輩!彼氏にしてください!
第7章 天才の苦悩
バレたか……
そんな事を思いながらも、なんでもない風の顔をして谷川くんを見つめる。
「……分かりましたよっ…!」
再び叫んだ谷川くんはそう言いながら顔を歪めた。
「その代わり約束してください!」
「は?」
約束って、一体何を?
「この絵を見て、ほのか先輩に変な奴が近付いてきても絶対に話したり仲良くなったりしないって」
「いや…あの…」
「約束してください!!」
そんな、絵を見て中のモデルに会いたがる人なんて本当にいるんだろうか…
正直いないと思うけど、あまりに谷川くんが真剣な目をして言うので、「はいはい」と答えると谷川くんはさらに私に近付いて迫ってきた。
「なんですか、その生ぬるい返事は」
「っ……別に」
「ほのか先輩、ちゃんと分かってます? あなたはとてもかわいいし、綺麗で強くて…かっこよくて…」
「………いつもいつも言い過ぎ」
「だーかーらー! 言い過ぎじゃないです。みんな……あなたが欲しいんですよ」
本当に大袈裟だ。
もし、私が谷川くんの言う通りの人物だとしたら、普通の生活出来ない気がするけど。
まぁ、もっとも、谷川くんが現れてからは普通の生活ではない…か。
とりあえず、ここで分かったと言っておけば、あの絵がコンクールに出されるのなら、それでいいかなと思った。
「………うん、きをつけ…る」
知らぬ間にいつもの如く壁に追いやられた私は、恐る恐る谷川くんを見上げながらそう言った。