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ぼんやりお姉さんと狼少年

第35章 確かにある意味アイドル



「湿布持ってこようか? 人の姿でもあんなに身軽なもんなんだねえ」


なんだかノミっぽいけど。
あの軽さは雪牙くんを思い起こさせる。


「ダイジョブ。 慣れてるし数日で戻る。 それでもあそこまで一気に跳ぶのは、肩痛めて無くても狼でも無理無理。 サルや鳥じゃあるまいし。 それでなくても、獣体よか身体能力が落ちるのにさ。 そこ突いたらもしかしてと思ったら、規格外だわあの人」


確かに伯斗さんなんかも、いつもよじ登ったり何度か枝から枝へジャンプして部屋まで来てたような気が。
琥牙はきっと以前よりも強くなったんだろうな。


「一応琥牙も毎日走ってるし」

「知ってるよ。 前にこっそり跡つけたことあるけど、 山ん中入ってかれて見失った。 多分人相手じゃ話になんないから、ああやって一人で体動かしてるんだろ」


私は普通に犬の散歩かと思ってた。


「そうだったの。 彼があんまり体を鍛えてる印象ないんだけど」

「俺たちが恒常的に動かなくなんのは、死ぬ前とか病気や怪我の時位。 鍛えるとかじゃなくて、力があるほど動いてないと逆に調子が悪くなる。 それ、見てみな」


足元?
目を落とすと芝生の一部がめくれてる。
そこの丁度手ほどの大きさに、ごっそりとめり込んだ土くれ。


「これ、さっき琥牙が手着いた時の」

「足でバランス取るにしても、腕一本であそこまで体浮かすの、どんだけの負荷だと思う? 獣体じゃそんな動きはしないし、人の姿でもちゃんとやってたんだろね」


それよりもこんなのバレたら、マンションの管理人さんに怒られちゃう。
とりあえず足で土をかけて穴を埋めつつ、しゃがんで芝生を広げておく。



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