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ぼんやりお姉さんと狼少年

第35章 確かにある意味アイドル



「体操選手にでもなったらいいのにね?」


あそこまでとは言わないまでも、床運動とかあんな感じじゃないかな。ガシガシと芝生を踏み固めながらそんなことを思った。

少なくとも裏稼業よりはマシ。


「いやこれただの土であんなやり合ってる最中……真面目に言ってる? 俺だって金メダル取れるわ。 そもそもそういう形での人間への介入は俺らにはご法度なの」


ぐぐ。 そんな馬鹿にしたような顔されたら傷付く。

でもまあ確かに、彼らがそんな形で目立つのはよろしくないわよね。

古今東西、出る杭は打たれるという。
朱璃様が話してた土地の問題云々より前に、差別されるとか人狼狩りなんてものが起こるとか。
その前に単純にパニックになるか。

その辺りは特に、人社会で生きてきた二ノ宮くんは身に染みて分かってるんだろう。


「そうだよね ……あ、卓さんは? 試すんならあの人でもいいんじゃない?」


今朝会った彼。
普通に腕なんか棍棒みたいで、分かりやすく結構な迫力だった。


「話になんないの分かってるし。 対人の格闘技ならそれこそ俺とはウエイトが違いすぎて……ん? でも、案外いいとこいくかもね。 純粋な撃ち合いなら、琥牙さんとどっちが勝つんだろ」

「琥牙? 以前は琥牙の方が強いって言ってなかったっけ」


そうなんだけど。 彼がどこか遠い目をし首を傾ける。


「んー。 なんだろ。 供牙様、あの人が抜けてから、ちょっとおかしんだよね。 最近妙な迫力あって」


供牙様。

琥牙なんてもう牙汪が完璧に入っちゃってるし、確かに卓さんと供牙様が少し混ざってた時なんてのもあった。
彼がその中から居なくなっても、なんらかの影響が残った……とか。



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