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ぼんやりお姉さんと狼少年

第36章 役立たずな言葉、饒舌な体*



「─────琥牙って、男の割にちっともゴツゴツしてないよね」

「……まあ」

「私、鎖骨とか好きだよ。 男の人の。 知ってた?」


首から肩にかけてと、胸の間の窪み。
以前琥牙としてた時に、私の視界にずっとこれがあった。
それからしばらく見るたびに赤面したり。


「……知らない」


俯いている私を彼がじっと見てる気配がする。


「ふふ。 昔そう言ったら、マニアックだって言われたっけ」


誰がとかは言わない。
私がそこをなぞる指を軽くつかんで彼が動きを止めた。


「どうかした? 煽られてるのはなんとなく分かるけど」

「単なる昔話だよ。 琥牙も教えてよ、そういうの」


その手を引き寄せて腕を伸ばし、私の右の胸を包んだ手のひらにぐっと力が篭もる。


「………ッ」


痛みに顔をしかめそうになったけど、やっと顔を上げられるからそれでいい。


「おれはこれしか要らない」

「……そう? 私は他の人が触れた体なのに?」


彼の手に自分を重ね、それを自ら揉むように動かす。
こんな風に触れられたんだよ。 そんな言葉を彼に向けた挑発的な視線に変えて。


「真弥」


「─────────……」


立ち上がり、荒々しく被さる唇。
その間を割ってくる舌に、自分のそれを夢中で絡めた。
何度も角度を変えて、口内をまさぐり吸い付いてくる口付けは息が続かなくても許されなくて。

膝が落ちそうになり腰に回された腕が、苦しいほど私を締め付ける。



「面倒臭い。 犯して欲しいんならそう言いなよ」


戦う相手の体。
接する人の心情。

そして恋人の擬態まで琥牙には分かるんだね。



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