ぼんやりお姉さんと狼少年
第36章 役立たずな言葉、饒舌な体*
嗚咽混じりに嫌だと繰り返す自分は子供みたいで、これまでの消せない過去をぐちゃぐちゃに塗り潰したくなる。
「知ってる。 言い過ぎた。 ごめん、泣かないでよ。 そういうのさえ、いまはもう堪んないんだ。 おれしか知らないなんて思ったら」
「…ごめ……っなさ…」
彼がここにいることは当たり前なんかじゃない。
私を傷付けて平気なんて人でもない。
……同じような思いをさっき彼にさせたことを後悔した。
今一番大切な人に私の過去なんて、話す価値無い。
ごめんね。
傷付けてごめんなさい。
そう言い続ける私を彼が抱え直した。
「いいよ。 謝んなくて。 止めるつもりないから」
そんなことを今度は優しい声で囁きながら寝室に向かう。
ベッドに横たえた私をうつ伏せに抱き締めて、いつものように肌を滑る手のひらと器用な指先。
すっかりと泣き止んだ私の吐息が温まり、甘く色付く頃にまた体を重ねる。
顎を包んでくる手のひらに横を向き、唇を合わせた。
不純物を洗い流すように、何度も口付けをしては愛し合う。
私を寝かせた背後から、そっと優しく動いてる。
浅いところの内側を、撫でるように移動して。
「気持ちいい。 また、濡れてきたけど。 痛くない……?」
「はぁ……痛いのも、嬉しい、よ」
そう言うとなんだか妙な顔をされたので不思議に思った。
「……真弥がそんな趣味って初耳……ええとごめん、おれは女性をぶったりそういうのはあんまり、逆に後味悪」
「違うから。 SM趣味じゃないから」
その知識があるのは意外だった。