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ぼんやりお姉さんと狼少年

第37章 Plan - Do


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「──────ああ、そういえばまだ月は丸いのね」


彼らが出て行ったあとのベランダに立ち、私は見送ったなりの薄着のままで、冷たく冴えた夜空を見上げていた。


『雪牙と山でも行ってくる』


修験者のような厳しい顔でそう言い残し、彼はあとの二人と連れ立って行こうとした。

待って。 ……また置いて行かれるような気がして咄嗟に彼の服の裾を掴んだものの、なんと言おうかと迷った。
いつ帰ってくるのかなとか、変わらず傍にいてくれるのかとか。


『…………?』


ベランダに足をかけたままで琥牙が訝しげに私を見た。


『あの……お祝い、は、してくれる?』


視線を上げながらおずおずと小声で言うと、仕舞いに彼はなんだか怯えた目をした。


『ホント今上目遣いとかやめて? する。 もう、なんだってする。 けどごめん限界。 死にそう』


などと首を振りつつ、久しぶりにばふんと狼に姿を変えた琥牙は雪牙くんを伴い、流れ星みたいに木立の間の宵闇に消えてった。


『先ほども言ったように、二次性徴を終えたばかりの雄の本能は凄まじいものがありますから……それこそ五感を支配される位の』


その後でそんな琥牙のフォローをしてくる伯斗さんにはあ、とそう曖昧に頷いておいた。
私だって頭からばりばり食べられるのは嫌だからね……。




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