ぼんやりお姉さんと狼少年
第37章 Plan - Do
「あの、お邪魔してます……」
至近距離で見過ぎていたのに気付いて慌てたが、彼の指がさらさらと私の髪をすくい、しばらくとそうされて、猫でもないのに心地良さに喉を鳴らしそうになる。
「特に心配はしていなかったが、女の色香を濃く纏うようになった。 真弥、愛されているようで何よりだ」
「供牙様。 眠っていたのですか……?」
供牙様は両腕を伸ばすと私の脇をひょいと持ち上げて、胡座をかいている腿の上に横抱きに乗せた。
いやだから、私、猫じゃないんですって。
胸元から覗く真っ白な肌に、自分の顔がぽっと赤らんだ感じがして俯くと、落ち着いた声が降ってきた。
「そこに居ればいい。 お前がこうやって私を呼ぶ時は、なにかを不安に思っているからか? そうだな……最近はよく眠る。 以前人の世界に下りて、少しばかり疲れたのかも知れん」
「大丈夫なのですか?」
「大事無い。 こうやってしばらくと休めていれば、元に戻るほどにしか私は力を使っていない」
そう言って、ふ、と目だけで微笑みかけてくる。
どうだか。
どこかの誰かさんみたいに、自分を省みずに無理するくせに。
そう思いつつこてん、と頭を彼の胸にもたせかけると寝る前までの慌ただしかった今日の出来事なども、じんわりほどけて心が休まった。
……こうやっているとあの里の朝を思い出す。
『俺の狭い胸でも貸そうか?』
そんなことを言って、こちらの我儘にも関わらず、私を暖めながら走ってくれた彼、二ノ宮くん。
私はやっぱり、彼が悪いことをする人だなんて思えないんだよね。