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ぼんやりお姉さんと狼少年

第37章 Plan - Do


そうはいっても、供牙様自身もその辺りには経験がないせいか、断定的な言い方を避け、一言一言自分の考えを小さく区切るように私に話してくれる。


「それはどうか……もしもそうあっても、おそらく一時的にだと思うが。 それもさっき言った私の霊力の残留かな。 だがあれ位なら効力を発揮するのは、同じくその恩恵のある我らの里に限ろう」


文節の間に、人と話すには若干長い沈黙があり、彼の声と相まってまるで唄でも諳んでるみたいに聞こえる。


「………里…」

「まあ、元々弱い個体では決して無いから、敵に回ると少しばかり手こずるかも知れんかな……真弥?」


力の抜けかけた私の背中を、彼の大きな手のひらが支えている。


「無防備に眠りおって。 これでは性徴云々の前に琥牙の気苦労も分かろうというものだ」


ほのかに綻びるような声色のあとで、額から前髪を指先で丁寧に梳かれている感触がした。


「真弥。 琥牙はお前を大切にしようとするあまりに曇っているのかもしれんが、お前は聡い。 散漫な所はあると言え、本来の両性の姿……男の冷静さと女の鋭さを兼ね備え、そしてまた、高い霊力を併せ持つ長子でもある。 お前ほどあれの伴侶に適する女は滅多に居るまい」



なにかあればまた朱璃を頼って私を呼べ。


─────自らの心のままに動くがいい




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