ぼんやりお姉さんと狼少年
第39章 不倫、バトル、なんで恋? 後編
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朱璃様たち二人が参戦してからは、明らかに向こうの士気も下がっていたのだろう。
あっという間に敵らしき狼たちは動かなくなった。
……何しろ、逃げようとしたり攻撃をしようとすれば、『ホレホレ』とでも言わんばかりに、二ノ宮くんや浩二の背後から朱璃の鋭い槍先につつかれる始末。
最後はとうとうプルプルと震えるままになってしまっていたのを、まるでいたぶるみたいで可哀そうだったかもしれない。
地面に完全に横になり、動かなくなったそれらを見回した伯斗さんが細く息を吐いてその場に座った。
「はぁ……大人しくなりましたかね。 生きていればいいのですが。 それにしても、老体には堪えます」
「せめて雪牙位居ればいいものを。 こんなときに、なにを連れ立って篭ってるんだ? あやつらは」
倒れている一方に近付いた伯斗さんがフンと鼻を鳴らす。
「これは最近は特にこちらに楯突いていた輩ですね……琥牙様含め、若衆にとっては厄災ですな。 この月は」
「全くだ。 彼らの獣欲をこれでもかというほど刺激するからなあ。 しかし力は増せども、逆に攻撃が単調なのは救い」
「大丈夫か? コロボックル」
加勢があったといっても、普段対人に慣れきっている浩二には骨が折れたことだろう。
両腕を腰に当て、呼吸を整えるごとく深く息をついた。
「コロ……」
浩二の口の悪さに物申さんと彼を威嚇しようとする伯斗さんを、朱璃様がやんわりとたしなめた。
「伯斗構わん。 ああ、大事無い。 それより保の方が」
「真弥、二ノ宮みとけ」
草場に倒れ込んでゼーハー言ってる二ノ宮くんの方が重症なのは分かる。
それでつい、はい! などと素直に返事をして彼の元に向かったが、どこか焦点の合わない浩二の表情になにか不自然なものを感じた。
「お前は真弥の知り合いか? 勢いで助太刀を頼んでしまったがかたじけなかったな。 ああ、お前も腕を……見せてみろ」