ぼんやりお姉さんと狼少年
第40章 里の特産月の石
浩二に連れ立ち、昔は私もここによく遊びに来たものだ。
『子供たちや町の人にも親しんでもらえるように』
そう言って七夕やクリスマスなどのイベントを欠かさない、優しく人徳のある人だ。
「浩二。 随分と賑やかだねえ……ああ、真弥ちゃん、すっかり女性らしくなって。 久しぶりだな。 っと?」
「山中さん、ご無沙汰です」
「朱璃と申す。 夜分に済まない」
「…………」
二ノ宮くんと伯斗さん以外が口を開いた。
礼儀正しい伯斗さんもそれにつられかけたが、どうやらここはぐっと堪えたようだ。
「これは女性連れとは珍しい。 浩二にも良い人が出来たのかな?」
ちらっとこちらに目をやり山中さんが微笑むも、浩二はどことなく複雑そうだ。
今は止めてあげていただきたい。
ちなみに朱璃様は自分のことを言われているとは思っていないのだろう、無表情である。
「ん? そこな犬は、怪我をしているのかね」
こちらに寄ってきた山中さんが、浩二に抱えられている二ノ宮くんに興味を示した。
「あ、はい。 その……出来れば治療をさせていただきたくて」
遠慮がちに言った私に、浩二がそれに被せてスパンと真顔でぶっちゃけた。
「これ二ノ宮です。 見たところ多分骨は折れてません。 出来ればまず消毒をしたいのですが、毛が邪魔だな。 朱璃、こういうのはどうするんだ」
脳髄まで筋肉なの?
「ほう、それは……」
山中さんが目を丸くする。