ぼんやりお姉さんと狼少年
第40章 里の特産月の石
敷布団の上にタオルを何枚か敷き、そこに二ノ宮くんを横たえた。
少し熱があるようだった。
「傷のせいだね」
ぬるま湯を浸したタオルで体を拭き、出血のせいで酷そうに見えた外傷は見た目よりも酷くなくほっとした。
「じき人に戻れるのだろう? 安静にして、そしたらまたよく診てみることにしよう」
そんな山中さんに頷き、一部だけ消毒を施して軽く止血止めに包帯を巻いておいた。
「この度はすまなかった。 私の管理不行き届きだ」
やっと落ち着いて銘々に座り出すなり背を伸ばし、それを深く折って詫びてきた朱璃様に驚いた。
「洗脳に近い状態でこの月に当てられ、うちの若い者が暴走をした。 それで人の世界に降りたのを知り、慌てて伯斗と跡を追ったのだ。 偶然にもお前たちが居て、最悪の状況にはならずに済んだようだが」
「そうだったんですか。 一緒にいた二ノ宮くんに咄嗟に助けられて、なんとか。 すぐに朱璃様も来て下さったので、こちらはなんともありません。 私たちこそありがとうございます。 ……どうか頭を上げてください」
浩二、朱璃様が頭下げてんのよ。 ぐいと肘を押し付けると彼も慌てて腰を折る。
「俺たちも助かった。 なにせこの方、あんなのとは闘ったことはないから。 詳しい事情は知らんが、二ノ宮やそちら方のお陰だ」
二ノ宮くんが怪訝そうに私を見てきたので、私の斜め後ろで横たわっている彼に向けて、鼻先に人差し指を立てて、この場は黙ってとジェスチャーをしておいた。