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この夏、君に溺れた

第6章 夢の終わり

「それはできないよ、芽依。」


非情な返事に、体が凍りつく。

「元々、夏休みの間だけって言う約束だっただろう?」

最もな意見に、私の体が先生から離れる。

「さあ、行こう。荷物は?」

私は寝室を指さした。


それを見て先生は、私の荷物を持って来てくれた。

「先生……」

「何?」

私が呆然と立ち尽くしている間も、先生はお構いなしに靴を履いている。

「先生は、私の事どう思っているの?」

「芽依……」

「少しでも私の事、好きになってくれた?」

靴を履いた先生は、私の荷物を持つと、私に靴を履くように指さした。

「先生……!」

「それを今ここで、議論する気はないよ。藤沢。」


久し振りに"藤沢"と呼ばれて、もう先生と過ごした夏は終わったのだと、確信した。


黙って靴を履いた。

先生の家を、一緒に出る。

玄関に鍵を掛ける先生を待って、マンションを後にした。

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