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この夏、君に溺れた

第7章 もしも許してくれるのなら

私は葉山君を押し離した。

隣にいる人が、驚いている。

「すみません。」

ペコッと頭を下げたけれど、葉山君の顔は、見れなかった。

二人が降りる駅になり、どちらからともなく、電車から降りた。


言おう。

もうこれ以上、葉山君に気を持たせる事はできない。


改札を出たところで、私から葉山君に話しかけた。

「葉山君。」

「何?」

「もう私に付きまとわないで欲しいの。」

葉山君はゆっくり、私の方を向いた。

「さっきの事、まだ怒ってるの?」

「いや、あれは……」

「もうしないから!」

葉山君の真っ直ぐな瞳が、私を襲う。


「ごめん。藤沢の気持ちも考えないであんな事。もうしないから。藤沢がいいって言うまで、触れない。だから、側にいさせてくれよ。」

いつも爽やかで感情を表に出さない人の、泣き出しそうな訴え。

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