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この夏、君に溺れた

第7章 もしも許してくれるのなら

「どうして?どうして、そこまで私にこだわるの?」


一瞬、静寂が過る。


「その答えは、藤沢がよく知ってるんじゃないの?」

「私が?」

「何度も俺を拒むのは、藤沢の中に平塚先生がまだいるからでしょ?」


風が体を押し倒しそうな勢いで、吹き抜ける。


「どうしてそれを?」

「俺も同じって事。」

葉山君は苦笑い。

「平塚先生が、学校に来てから藤沢の心に住み着いたみたいに、俺も藤沢を初めて見た時から、ずっと君が忘れられない。」

「葉山君……」

私が名前を呼ぶと、やっといつもの葉山君のように、爽やかな笑顔に戻った。


「藤沢は、平塚先生の事、どうすれば忘れられる?」

「それは……」

今の私にはわからなくて、近くを通る車を見るのが、精一杯だった。

「先生に……」

「先生に?」

「奥さんとか、子供ができたら……」

ありきたりな回答をした。

それでもきっと、先生を忘れる事なんて、できない。

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