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この夏、君に溺れた

第7章 もしも許してくれるのなら

また夏が行き過ぎる。

そう思いながら、駅の前を歩いていた。


ここは、先生と再会した時に、一緒に歩いた場所。

先生に初めて抱かれた後も、別れたあの日も、一緒に歩いた場所。

もう戻ってこない時間なのに、季節だけは今年も巡ってくる。

私は、そっと目を閉じた。

今年の夏は、去年程暑くはなかった。

あの身を焦がすような、暑い夏ではなかった。


「あー、暑い。」

同じ半袖のワンピース、同じ日差し、同じセリフなのに、どうしてこんなに、違う夏だと思ってしまうのだろう。

「ああ、でもやっぱ暑い。」

額から流れる汗を拭いたら、ふと近くに本屋があるのが見えた。


先生と再会した、あの本屋。

私は去年と同じように、涼みに本屋に入った。

クーラーが効いていて、涼しい。

少しだけ生き返った私は、頭を上げた。


|《衝撃の、禁断ラブストーリー》

そんなキャッチコピーが、私の目に入って来た。

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