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この夏、君に溺れた

第7章 もしも許してくれるのなら

こんな街中の本屋さんで、大々的に宣伝しているなんて。

どんな本なんだろう。

私は、その下にある本を見た。



《新人コンテスト 最優秀賞
平塚孝太郎先生が贈る期待のデビュー作》



「先生?」

そこには、まさかの名前があって。

あの時の先生の夢が叶っていたことに、後から後から感情が降って沸いた。

「よかった、先生……」

私はその本を一冊手に取ると、ぎゅっと抱きしめた。

その時だった。

私の隣に立つ影が見えた。

「その本って、面白い?」

驚いて横を見ると、スーツを着たサラリーマン風のお兄さんだった。

「あっ、いえ。私、まだ読んだ事が無くて……」

なのに、こんな抱き締めてるなんて、恥ずかしい。

「でも!中身は保証します!この作家さんも、本当にいい人なんです!」

知らない人相手に、むきになって叫んでいた。


「くくくっ……」

ほら、相手に笑われている。

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