双龍の嫁
第2章 風龍
背中や腰に這う手つきはとても緩やかなのに、それに反して、彼の口は荒々しくわたしの口内を蹂躙します。
それらが絡め取られたわたしの頼りない舌をしごき、かぁっと胎内が熱くなり、血が急激に脈打つのを感じました。
「んっ……ァんぅ……ッ…つっ!」
体の芯から頭、それから四肢へと鋭敏過ぎる感覚が走り、それに耐えられずに、ひくんひくんとおののくわたしの体が支えられました。
「……まだこんなもので気をやってしまう癖に、男が欲しいなどと言うものではない」
そんな風にたしなめて、夫は優しくわたしを見下ろしています。
気だるくて、わたしにそれに応えて言葉をつぐめる力はありません。
そして今度はこめかみに優しく唇が触れたのを感じました。
宵闇がわたしたちを包み、岩陰に重なった大小の影をうつしていました。
わたしのお尻の辺りに、硬く起立した彼自身が当たっているのに気付きました。
……そこへ媚びるように腿を擦り付けたのは、無意識からの行動でした。
ひと時治まったと思ったわたしの熱は、未だ熟したまま粟立ち続けています。
そんなわたしに、夫は情欲を帯びた瞳を向けました。
雨上がりの深緑のようにしっとりと濡れて、僅かにたわめられた眉はなにかに耐えているかのようです。
「沙耶────────」
彼は岩場に敷かれた布の上に、仰け反らせるようにわたしをやわらかく倒しました。
膝から腿に手の感触、それから唇が当たります。
ぬめった舌が内腿を這いました。
思わずうち震えてしまったわたしに、今度は逃げても離さない、と夫は告げました。
「悪いが、もう待てそうにない…」