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双龍の嫁

第3章 茶話会


四龍の中でも気性が荒いと云われる火龍です。
それなのに彼の様子には先ほどから、璃胡に対する分かりやすく激しい怒りというものがありません。



「………そうだね。 前半は沙耶の言うとおりだ」


───────そんな声とともに一瞬、この地がやわらかな水で満たされたような感覚が肌を撫でました。


わたしの隣にいた優美な青年はそこから姿を消し、そこには火の龍もその身を仰ぐほどの、元の湖にいた水龍がいました。

その人ならぬ様を初めて見、まず璃胡が分かりやすく驚愕の悲鳴を上げました。


「へ………ひいっ!?」


夫が璃胡にかがみこみんで、一寸もない近い距離からまぶたの無いおおきな瞳で、じいいっと彼女を凝視しています。

驚いているのか恐ろしいのかその両方か、璃胡は口を閉じるのも忘れて腰が抜けたように、へなへなとその場に座り込んでしまいました。


「ば、化け物……!!」

「そう、これが私の真の姿だ」


そんな璃胡の悲鳴にも関さず、水龍はにたあっと裂けた口の端をあげ、彼女に向かって手を伸ばしました。


「……きゃあぁっっ!!」


そしてぐっと璃胡の胴をつかむと、ふむふむと考え込むように顎に手をやります。
璃胡はごつごつとした彼の指や堅い水かきを両手でおさえ自らの体を逃そうとしますが、当然それはびくともしません。

彼女の表情がゆがみ、苦痛にきつく眉を寄せました。


「く、苦しっ……」

「…水龍………?」



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