双龍の嫁
第3章 茶話会
火龍がわたしの前に進み出て、水龍に向かって真っ直ぐに両手を伸ばしました。
「水龍……どうか私の花嫁を返してくれ」
「う…ひ…ひく…っ」
幼い顔立ちを崩し、しゃくりあげている璃胡はなおさら痛々しくみえました。
そんな璃胡に火龍は優しく話しかけます。
「璃胡……俺に近付くどころかろくに目も合わせようとしなかったのは、それが理由で?」
「だ、だって……こんなわたくしが、尻軽な女だと…偽りだらけだと、思われたら……ひっく。 わた、わたくし」
もしもそれで拒絶されるぐらいなら、自ら離れたほうがいい。
……それが心を寄せている相手ならばなおさら。
なにも言わず夫は璃胡から手を離し、火龍が泣き続ける彼女をそっと受け取ります。
なんと言っていいか分からないといった表情の火龍でしたが、躊躇いがちに口を開きました。
「璃胡。 俺はお前を見たとき、嬉しかったんだ」
「っ………?」
「お前はこの天のように、表情をころころ変える。 たまにみせてくれる笑顔はとても無邪気で俺まで嬉しくなる。 こんなに可愛い花嫁をこれから生涯そばに置けると思うと、俺はとてもそれを嬉しく思った」
綻んだようにふたたび泣き始める花嫁に、火龍は困った顔をしつつも肩と首の間に彼女の小さな頭をおさめると、なだめるようにそれをぽんぽんと撫でて声をかけ続けました。
「ひ………火……龍…ぐすっ」
「悪いのはお前じゃない。 悩んだらこれからは俺に一番に話してほしい」
「…火龍……」
「俺たちは夫婦だろ?」
「………ごめ……なさ…」
そうして抱き合う二人を見つめながら、ほうっと息をつくと潤香も同じようにそうしていて、わたしたちは顔を見合わせたのちに、くすりとちいさく笑い合いました。