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双龍の嫁

第3章 茶話会


二人から少し距離を取り、潤香が再び元ののんびりとした様子で眉を下げ、ことりと首を傾げます。


「わたし、璃胡さんの事情もしらずに、きついことを言ってしまったわねえ。 いつか謝罪する機会をくれるかしら……?」

「きっぱりと他人を怒ることが出来る潤香さんは、とても素敵だと思います。 ……ましてや、我が身のことでもないのに。 でも、わたし、近々またお二人にお会いしたいわ」


そう言うと彼女は一瞬目を見開いて、「わたしも会いたいわ」と、若干ばつが悪そうに照れ笑いをしました。


「ところで潤香さん。 土龍はまだお迎えに来ていないの?」

「え? 先ほどからいらっしゃるわよ。 ほら、ここに」


意外な発言に辺りを見渡すと、わたしの視線の下にまだ少年とも見紛うような男性がたたずんでいます。

この方が土の龍なのでしょうか。

わたしは大急ぎで腰を折って謝罪しました。


「あ、あっ……ごめんなさい!」


てっきり、豊穣な大地を現すような大柄な人物を想像していただけに、彼のその小動物にも似た姿に驚きました。

彼は兎か栗鼠にも似た黒い瞳をわたしたちに向けて、これも意外に成熟した口調で挨拶をしてきました。


「構わないよ、はじめまして双龍の花嫁。 それに水龍も久しいね。 他の龍の尻ぬぐいはいつも創めの龍の役割だ。 はは、それにしても相変わらずまどろっこしいことをする……昨今の日照りのおかげで、潤香の夕食の調達に手間取ってね」


そう言って興味を示した潤香の着物の裾をくいと引っ張ると土龍は得意げに彼女を見上げました。


「今晩は川の暑さから逃れてきたしじみを河口で採ってきたのだけど、お前の気に入るかな?」



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