双龍の嫁
第4章 双龍の嫁
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わたしは目の前にある、小山を作るような山海からの貢ぎ物に眉を下げました。
「─────水龍ったら、まあ。 こんなに」
今は岸に上がっている人の姿の彼は、広大な湖を背景にその美しい微笑みを柔らかく綻ばせました。
「なにも私からだけということではない。 この雉は火龍のところからだし、山菜と芋は地龍だね。 私は滋養のある稚児の魚を」
「……たくさん戴くのは有難いのですけれど、いくらなんでも食べきれないです」
「沙耶」
背後にひゅっとした風の気配を感じ、振り向くと風龍が草の葉を散らし、そこに降り立ったところでした。
「今日は鳥たちから、諸々の届けものが。 この木の実は生でも炙っても芳ばしくて美味いそうだ。 ああ、他にも祝いが来ているな。 今宵は私が馳走しよう」
神秘的で逞しい男性神のような神々しさを持つ風龍。
そんな彼がまとめて食材を風に巻き込んで包むと、再びその場を離れようとします。
「ま、待ってください。 私がやります。 夫にそのようなことをさせるわけには」
慌てて彼のあとを追おうとするわたしの腕を、やんわりと水龍が包んで引き留めました。
「……沙耶。 風龍はこう見えて、一度心に触れた相手にはとことん甘い男だからね。 好きにさせるといい。 ましてや龍の子などもう、何百年ぶりだろうね……」
そう言って水龍がわたしのお腹をゆっくり手のひらで撫で、耳許に軽く口をつけます。
「フン……私は今は沙耶に無体は出来んからな。 とはいえ花嫁が気に病むのは腹に悪い。 沙耶。 私が戻ってくるまでせいぜい水龍に可愛がってもらえ」
「そ、そんな……」