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「もしやとは思ったけど、やっぱり悪い虫がついてしまったようだね、美桜ちゃん」



酒井さんはネクタイを直すとニヤリと笑った。



「この事は美沙に報告するよ。その男が僕に暴行したこともね」

「！」

「美沙のことだから、一人暮らしは禁止するだろう。まあ、それまでせいぜい恋人ごっこでもして楽しむんだな」

「……貴様っ……」



シリウスが殴りかかろうとしたけど、私は止めた。



「いいの、シリウス。行こう」



私は早くその場から立ち去りたかった。



本当に嫌いだ、あの人……。
なんでお母さんはあんな人を選んだんだろう。

なんでお父さんと離婚したの？
性格の不一致だなんて言ってたけど、お父さんは私を尊重してくれたし、優しかったよ。



『美桜……父さんは経済的にお前を養えないから母さんに任せるしかないけど、何か困ったことがあったら連絡するんだぞ』



私は不意にお父さんに言われたことを思い出した。