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お話の続きは異世界で

第12章 川のほとりで語らえば

「でも…」

「そもそもネェちゃんは、自分から行くって言い出したんだ。アンタが気にする必要はねーよ」

それはそうなんだけど。

しかも嫌々じゃなく、むしろノリノリだったけど。

カエルにそう言われてしまうと、それ以上何も言えなくなってしまう。

カエルは棒を岩に当てて、小舟の行き先を定めてくれる。

お互い無言のまま、緩やかに進んでいき――

「不満なのは欲求じゃないのー?」

不意に、場にそぐわない程のんびりした口調の声が聞こえた。

「へ?」

「はぁ!?」

その声に驚いて、お互い顔を見合わせて…

カエルが喋ったんじゃないみたいだ。

もちろん、私でもない。

じゃあ、誰が――?

辺りを見回せば、見覚えのあるタキシードの裾がふわりと風に踊っていて…

「あ!お前…っ!!」

その姿を確認して目を見開いたカエルに、その人は優美に笑いかける。

「久しぶり、って言葉も白々しいかな?」

「ウサギ!」

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