先生、俺が教えてあげる。キスも全部
第5章 人気者
「__よし。今日はここまで。しっかり復習して来いよ。」
授業を無事終わらせ、教科書を片付けていると教壇の前に誰かが立ち、誰かと思って顔を上げれば佐伯がいつもの無表情で立っていた。
「…あー…佐伯、どうした?」
「…分からないとこあるんだけど教えてくれない?」
え…?
びっくりして教科書を揃えていた手が止まる。
め、珍しい…。
ちょっかい出してくることはあっても教えてくれだなんて…今まで1回も、、、
「あ、あぁ。いいよ。何処が分からなかった?」
「…ココ、なんだけど。」
ノートを開き、分からない部分を指差してくる佐伯。
こんなこと今まで無かったから新鮮でなんか嬉しくて口元が綻ぶ。
アピール無し、ちょっかい無しだからホッとするし勉強面で本格的に教えられるのはやっぱり嬉しい。
「おー、ココは…」
分かりやすいように丁寧に…。
事細かに教えていくと、佐伯は真剣な表情で聞きシャーペンを走らせる。
普段無い光景に感動すらしてくる…
大体授業終わりは変な質問されるか、好きかだのだったからなぁ。
いつもこうだったら有難いんだけど。
「…ってこと。どうだ?」
「…うん、分かりやすかった。ありがとう、先生。」
口元を柔らかく上げながらお礼を言う佐伯に俺も自然と口角が上がる。
よかった…。分かりやすく説明出来て…。
「そっか。ならよかった。んじゃ次の授業も頑張れよ。」
今回は何事も無く終わりそうだ。
うんうん、と勝手に安心していれば佐伯の口からとんでもない発言が落とされる。
「今度さ、二人っきりで勉強教えて欲しいなぁ。」