がーるず・らぶ2 ラブ・スイッチ
第1章 恋愛のスイッチ
「あ〜んなっ☆」
小学の頃からの幼馴染の雫が、私を見つけて満員電車に飛び込んで来た。
私が入っただけでキツキツな状態なのに、そこへダイブするように飛びこんで来たからたまらない。
むぎゅわああっ!!
私の後ろ……背後にいる誰だか知らない人が「ぐえはあ!」と、なんか漫画のやられ役のような悲鳴を上げたので反射的に謝りながら、飛びついて来た雫が電車のドアに挟まれないよう、抱きかかえるようにして引っ張り込んだ。
「し〜ずぅ〜〜くぅ〜〜〜っ……貴女ねえ……いい歳なんだから、も少し落ち着きを、だねえ?」
「え〜?!朝っぱらから、おせっきょーですかあ?杏奈ちゃん?」
満員電車の中、夏場の車内はクーラもたいして効かない。
汗の臭いとオーデコロンや香水、ヘアスプレーの残り香、化粧品、衣類ニオイ消し消毒スプレーなどなど、様々なワンダーワールド的な鼻を突く香りに悩まされつつ、ギュウギュウの状態があと6駅分……続くのだ。
これを、月曜から金曜まで、桑名方面へ毎日続けながら私達は通勤している。
高校生の時は逆方向。員弁方向へ通学していたがここまで非道いラッシュにはならなかったから……平日の反対側の通勤なんて、考えたことも無かったし……
高校生の時はこの北勢線の、なろうゲージという、普通の電車より小さくて可愛い黄色の電車が大好きだったんだけど……満員状態になるとここまで地獄絵図になるなんて、考えもしなかった。
「そうだよね〜…。そりゃあ、こんな地獄にいたら、気持ち悪くなったりもするよ、ねえ?」
だから、夏場は特に女性が貧血状態になったり、気持ち悪くなったりして…
西桑名駅に電車が着いた時の、ドアが開いた瞬間に………ホームへ倒れ込む人がいる……
なんてことはたいして珍しいことでは無かった。