狂愛の巣窟
第7章 【再燃するココロとカラダ…】
懐かしい声は一瞬であの頃の記憶を呼び覚ます。
運転席から助手席の窓開けて手を降っている人物。
スーツ姿の上にジャンパー羽織ってて仕事中なの?的な怪しい彼は満面の笑みでもう一度「十和ちゃん久しぶり!」と声を掛けてきた。
人懐っこい性格に明るい笑顔と声。
ゆっくり近付いて確信へと変わる。
「岸くん?わぁ、懐かしい、久しぶり」
「乗って!送るよ」
「え、仕事じゃないの?」
何の仕事かわかんないけど自家用車じゃなくて社用車っぽいし気が引ける。
「大丈夫!皆もう待ってるから、バスより早く着くし乗って?」
早口でそう言われるからつられて乗ってしまった。
シートベルト着用する前に発進しちゃうんだもん、焦り過ぎ。
落ち着かないところは変わってないね。
見た目もあまり変わってない。
目尻のホクロ、懐かしい。
笑うと八重歯が見えて天パみたいなふわふわした髪が揺れるんだ。
同い年なのに皆からは舎弟扱いだった。
それも変わってないのかな。
「十和ちゃん相変わらず綺麗だね!一発でわかった」
「そっちもね、元気だった?」
「うん、何とかね、それより十和ちゃんの話聞きたい!ちょっと回り道して行こうよ」
「え、このまま向かうんじゃないの?」
「エヘヘ、2人で話そうよ、ダメ?皆と合流したら話す機会なさそうだもん」
「でも皆もう集まってるんでしょ?」
「エヘヘ、嘘だよん」
強引に進めちゃうところも変わりなし。
ねぇ、成長してる?
笑うとこなんだけど、ここ。
「向かいながらでも話せるでしょ?」
「連れて行きたい場所があるんだ」
「え……何処?」
結局着くまで教えてもらえなかったけど途中で気付いてた。
それは、私たちの母校だ。
あいにく二年ほど前に合併してこっちは廃校となったらしい。
まだ教室も壊されてないし卒業生がこぞって思い出に浸りに来てるみたいで、割と簡単に入れちゃったのだ。
「脚元危ないから」と手を繋いで来た。
ヒールだったしそこは甘えさせてもらう。
シーンと静まり返った校舎だけど懐かしさのあまり2人とも興奮しちゃってはしゃいでた。