狂愛の巣窟
第10章 【狂愛の巣窟ー最終章Ⅱー】
きっと捨てられる。
こんな人間だとは思わなかったって。
こんな股の緩いアバズレだとは…って思ってるんでしょ。
すぐに離婚とはならなくても2人の関係は間違いなく破綻に向かう。
愛してる………享さんだけを愛しているわ。
言えた義理じゃないけど、今溢れて仕方ない。
震えてる身体を擦り「十和子」って呼んでもらう資格なんてないよ。
捨てないで………享さんを失いたくない。
けど言えない。
享さんの出す結論に従うしかない。
有紗も一颯くんも真っ青ね。
本当に怒った顔初めて見たのかしら。
「十和子……ちゃんと俺を見て」
怖い………目を見て捨てられるのはキツい。
終わるってわかっててとどめを刺されるのね。
ちゃんと最後を与えてくれるのは享さんの優しさなのだろうか。
恐る恐る目を合わせた。
泣きじゃくる私の頬を拭い優しい目で見つめ返してくれる。
「ごめんなさい……私……っ」
「泣かせる為に帰って来たんじゃないんだけどな」
わかんない……
この期に及んで私は、もう二度と享さんに抱いてもらえないんだと打ちひしがれていた。
本当に終わる瞬間は呆気ない。
「十和子、ごめん」
目を閉じた。
閉じても溢れてくる涙にまたしゃくりあげる。
「知ってたよ」
「………………え?」
「俺、十和子が関係を持った男、全員知ってる……この他も」
絶句した。
携帯にGPSでも!?
興信所でも雇った!?
どうして享さんも泣きそうなの?
「謝らなきゃいけないのは俺の方……」
両手を握り締め私を見る目はどこにも嘘がなくて。
戸惑う私に「ごめん」ともう一度謝ってきた。
最後まで何でこんなに優しいの…?
全部俺が悪いって……そんなはずないのに。
平気で裏切って享さん以外の人に私、股開いてたんだよ?
本気で不倫してたんだよ。
「俺を見捨てないで欲しい」
「え……?」
「捨てないで、十和子」とキスしてくるのです。
それだけで疼く身体は享さんを欲してる。
許される事なら破綻だけはしたくない。