冬のニオイ
第20章 誰も知らない
【翔side】
「人間は子供時代を生き抜くのが一番難しいんだ。
肉体も弱いし、両親の性質や環境に、その後の人生が大きく左右される。
信じられない話だと思うけど、ある程度育ってからの方が良い、って望む魂も存在するんだよ。
だからね、僕は今回、生まれる前にその魂と約束したの。
僕が7歳で肉体を離れた後は、引き続き同じ肉体にその魂が入って人間体験をする、って。
ウォークインって呼ばれる現象なんだけど、つまり入れ替わる、ってことだね。
滅多にあることじゃないんだけど、全くないことでもないんだ。
臨死体験をして蘇生した、とか、そういうきっかけを使って入れ替わりが行われるの。
ウォークインは前もって計画されていた場合には、とてもスムーズなんだ。
記憶の障害が起きることも無いし、周囲の人が違和感を覚えることも無い。
誰も気がつかないし、新しく肉体に入った魂も、自分がウォークインで入ったってことは忘れてるのが普通なの。
……ここまでは、大丈夫?
言ってる意味、なんとなく解かる?」
タツオミ君が真剣な顔で心配そうに俺を見るから、俺は実のところ大して興味もなかったけれど、仕方なく頷いた。
「今回は予定外にお兄さんに体を貸しているから、僕の肉体に次に入る予定の魂が、今、焦ってるんだ。
自分が入る予定だったのに、このままだと入れなくなるんじゃないかって凄く焦ってる。
この魂は今回やっと人間体験が出来るの。
ずっと待ち望んでたから、すぐに体を明け渡されないことにイライラしてる。
……お兄さん、目的をしっかり持たないと、僕の体には収まっていられなくなるよ。
現に、もう既にあっちの魂が肉体に入ったりしてる。
このままだと、お兄さんはもう、僕の体は使えないかもしれない。
自分の肉体に戻れればいいけど、お兄さんの後悔はまだしっかり残ってるよね?
こうすれば良かった、って気持ちが、まだあるでしょう?」
タツオミ君が俺の手をギュッと握って、真剣な顔で言った。
こうすれば良かった、と思う事?
俺はぼんやり考える。
「シンプルに言葉にしてごらん?
あの時、こうすれば良かった、って思ってることは?
言ってみて」
「人間は子供時代を生き抜くのが一番難しいんだ。
肉体も弱いし、両親の性質や環境に、その後の人生が大きく左右される。
信じられない話だと思うけど、ある程度育ってからの方が良い、って望む魂も存在するんだよ。
だからね、僕は今回、生まれる前にその魂と約束したの。
僕が7歳で肉体を離れた後は、引き続き同じ肉体にその魂が入って人間体験をする、って。
ウォークインって呼ばれる現象なんだけど、つまり入れ替わる、ってことだね。
滅多にあることじゃないんだけど、全くないことでもないんだ。
臨死体験をして蘇生した、とか、そういうきっかけを使って入れ替わりが行われるの。
ウォークインは前もって計画されていた場合には、とてもスムーズなんだ。
記憶の障害が起きることも無いし、周囲の人が違和感を覚えることも無い。
誰も気がつかないし、新しく肉体に入った魂も、自分がウォークインで入ったってことは忘れてるのが普通なの。
……ここまでは、大丈夫?
言ってる意味、なんとなく解かる?」
タツオミ君が真剣な顔で心配そうに俺を見るから、俺は実のところ大して興味もなかったけれど、仕方なく頷いた。
「今回は予定外にお兄さんに体を貸しているから、僕の肉体に次に入る予定の魂が、今、焦ってるんだ。
自分が入る予定だったのに、このままだと入れなくなるんじゃないかって凄く焦ってる。
この魂は今回やっと人間体験が出来るの。
ずっと待ち望んでたから、すぐに体を明け渡されないことにイライラしてる。
……お兄さん、目的をしっかり持たないと、僕の体には収まっていられなくなるよ。
現に、もう既にあっちの魂が肉体に入ったりしてる。
このままだと、お兄さんはもう、僕の体は使えないかもしれない。
自分の肉体に戻れればいいけど、お兄さんの後悔はまだしっかり残ってるよね?
こうすれば良かった、って気持ちが、まだあるでしょう?」
タツオミ君が俺の手をギュッと握って、真剣な顔で言った。
こうすれば良かった、と思う事?
俺はぼんやり考える。
「シンプルに言葉にしてごらん?
あの時、こうすれば良かった、って思ってることは?
言ってみて」