冬のニオイ
第21章 Tell me why
【智side】
翔くんとは、自然消滅と言うにはあんまりな最後だった気がする。
しばらく会いたくないと言われてから、先が見えない「しばらく」を待つのに疲れ果てて。
自分から引っ越して彼の前から消えたくせに、オイラに翔くんを恨む気持ちがなかったと言えば嘘になる。
こんなに好きになってしまって、今更一人でどうやって生きて行けばいいのか、と思ってた。
もちろん一人でだって生きては行ける。
オイラは早くに親元を離れたし、そもそも自分のことを誰かに相談したりする習慣もなかった。
翔くんに会う前の自分に戻るだけの話だ。
だけど、それまで知らなかったことを知ってしまって。
大事にされるってどういうことか、幸せってどういうことか。
知ってしまった後になって捨てられるとは思ってなかった。
気まぐれに野良猫に餌をやって、暖かい寝床を与えてなつかせておいてから、突然に居なくなってさ。
翔くんにとってはその時だけの気まぐれだったかもしれないけど、オイラは愛してたんだ。
大好きだった。
視線を交わすだけで勇気が出るとか。
仕事をしてても、何かある度にきっと翔君ならこんな風に言うだろうな、って思ったり。
いつも、何をしてても、翔君のことが頭のどこかにあって、繋がってた。
お互いに別々の場所で食事をしてたって、翔君は何を食べたかな、とか。
もう仕事終わったかな、もう眠ったかな、って。
すっかりそれが日常になっていたのに、突然放り出された気がした。
君、無しで。
あの優しい目線や、呼びかけてくれる声、触れてくれる体温を失って。
オイラの中にあった何かは、翔くんと共に消えてしまった。
あたたかくて、優しくて。
嬉しくて、愛おしかったオイラの中にあった何か。
こんなに辛いなら、もう誰のことも好きになりたくないと思って生きてきた。
どんなに人恋しくても、絶対にもう、誰とも特別な関係にはならない、って。
『おきざりにして、ごめ……』
『しんじ、て、やれ、なくて……』
タツオミがオイラに言った言葉を思い出す。
翔くんは、どうして今更、オイラに会おうと思ったんだろう。
それが知りたい。
もう、一番苦しかった時みたいに、翔くんのことを恨むような気持はないけど……。
本物の翔くん(って言い方も変だけど)に会ったら、オイラは一体どう感じるんだろう。
翔くんとは、自然消滅と言うにはあんまりな最後だった気がする。
しばらく会いたくないと言われてから、先が見えない「しばらく」を待つのに疲れ果てて。
自分から引っ越して彼の前から消えたくせに、オイラに翔くんを恨む気持ちがなかったと言えば嘘になる。
こんなに好きになってしまって、今更一人でどうやって生きて行けばいいのか、と思ってた。
もちろん一人でだって生きては行ける。
オイラは早くに親元を離れたし、そもそも自分のことを誰かに相談したりする習慣もなかった。
翔くんに会う前の自分に戻るだけの話だ。
だけど、それまで知らなかったことを知ってしまって。
大事にされるってどういうことか、幸せってどういうことか。
知ってしまった後になって捨てられるとは思ってなかった。
気まぐれに野良猫に餌をやって、暖かい寝床を与えてなつかせておいてから、突然に居なくなってさ。
翔くんにとってはその時だけの気まぐれだったかもしれないけど、オイラは愛してたんだ。
大好きだった。
視線を交わすだけで勇気が出るとか。
仕事をしてても、何かある度にきっと翔君ならこんな風に言うだろうな、って思ったり。
いつも、何をしてても、翔君のことが頭のどこかにあって、繋がってた。
お互いに別々の場所で食事をしてたって、翔君は何を食べたかな、とか。
もう仕事終わったかな、もう眠ったかな、って。
すっかりそれが日常になっていたのに、突然放り出された気がした。
君、無しで。
あの優しい目線や、呼びかけてくれる声、触れてくれる体温を失って。
オイラの中にあった何かは、翔くんと共に消えてしまった。
あたたかくて、優しくて。
嬉しくて、愛おしかったオイラの中にあった何か。
こんなに辛いなら、もう誰のことも好きになりたくないと思って生きてきた。
どんなに人恋しくても、絶対にもう、誰とも特別な関係にはならない、って。
『おきざりにして、ごめ……』
『しんじ、て、やれ、なくて……』
タツオミがオイラに言った言葉を思い出す。
翔くんは、どうして今更、オイラに会おうと思ったんだろう。
それが知りたい。
もう、一番苦しかった時みたいに、翔くんのことを恨むような気持はないけど……。
本物の翔くん(って言い方も変だけど)に会ったら、オイラは一体どう感じるんだろう。