テキストサイズ

冬のニオイ

第21章 Tell me why

【智side】

久しぶりに会った岡田っちは、記憶の中の彼より肉付きが良くなってた。

「すげぇな……」

オイラが思わず手を伸ばしたら、胸を突き出すようにしてニヤリと笑う。

「かっこいいだろ。触っていいよ」

昔と変わらない笑顔だった。

翔君の病室に入る前に渡したいものがある、と言って、岡田っちは茶色の大きな紙袋を目の高さまで持ち上げて見せた。

一旦外に出て、散歩コースなのかな、病院の庭をしばらく歩く。

隅の方の目立たない場所にベンチがあって、古びた灰皿が置いてあった。
一服点けていいか? と言われて頷く。
オイラはそこで、翔くんからの手紙を受け取った。

懐かしい筆跡を見た瞬間から、もう勝手に涙が零れてきて。

止められなかった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
大野智様

もしも現在、貴方が幸せに暮らしているのなら、今頃になって突然手紙を差し上げる僕をどうか許して欲しい。
貴方に人生の伴侶がいるのであれば、読まないでください。

実は先日、〇〇ホームのパーティーに僕も参加していました。
そして、誤って貴方のコートを持ち帰ってしまったのです。
ホテルの手違いなのか、この季節に貴方が不便を感じているのではないかと心配しています。

けれども、こうして貴方に連絡をする理由が出来たことに、僕はとても感謝しています。

この10年、貴方のことを思い出さない日はなかった。
貴方と離れてしまったことを、僕はずっと後悔して生きてきました。

智君、貴方を傷つけ苦しめた原因は、全て僕にあります。
貴方は何一つ悪くありません。

許しを乞える立場ではありませんが、それだけはどうしても伝えたいと、ずっと願っていました。

図々しいかもしれないけれど、もしも貴方に今、何か困っていることがあったなら、僕でも少しは力になれるかもしれません。
その際は、声をかけてもらえればと願っています。

しばらくの間、僕たちが最後に会った店に仕事帰りに寄ります。
もう顔も見たくないかもしれませんが、僕はそこに居ます。

貴方の暮らしを乱すつもりはありません。
必要がなければ、どうか無視をしてください。

智君、貴方の幸せを心から願っています。




2017.11.26
櫻井翔

誕生日おめでとう
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





ストーリーメニュー

TOPTOPへ