冬のニオイ
第22章 YOUR SONG
【翔side】
どうしたのか、と眺めていると、キタムラさんからスマホのバイブ音が聞こえた。
直前までフリーズ状態だったのに、習慣なのか、彼がスマホを取り出すのは早かった。
大人しく待っていると、電話が終わってからキタムラさんが言う。
「ぼっちゃん、大野さんにお会いになりたいですか?」
「さとしくんからデンワだったの?
かわってほしかったなぁ……」
俺がやんわり言うのに、首を左右に振る。
電話はぶっさんからだったらしい。
キタムラさんは何とも言えない表情で俺を見てから、今日、ぶっさんと智君が病院にお見舞いに来る、と教えてくれた。
「うん、あいたい! ぼくも行くっ」
かしこまりました、とキタムラさんは言ったのに。
出掛ける支度をしてマフラーを首に巻いたところまでは記憶にあるけど、車が玄関に来るのを待ってるうちに意識がぷっつりと途切れて。
次に目が覚めた時には外は真っ暗になっていた。
キタムラさんにどうして病院に連れて行ってくれなかったのか、と訊いたら、俺が眠ってしまって起きなかったからだ、と言われた。
それから。
だんだんと、タツオミ君の肉体に入っていられる時間が短くなった。
いつの間にか眠ってしまっているようで、何かをしている最中でもフッと意識が途切れる。
気がつくと何時間も経っていて、今がいつなのか全く分からなくなるから、とにかく目の前にいる人に時間と日にちを何度も訊いた。
教育が行き届いているのか、あからさまに不審そうな顔をする人はいなかったけれど、屋敷で働く人とも会話が繋がらなくなってきてる。
智君に連絡しようとしているのに、俺が起きている時間が定まらないから中々タイミングが合わない。
そもそもタツオミ君は補聴器を使っているくらいだから、電話にあまり縁のない子供だ。
一日の殆どを屋敷の中で暮らす生活をしているし、必要がないから、当然、携帯電話の類は持たされていない。
智君の仕事中に連絡するのはキタムラさんが良い顔をしないし、こっそり別の人に電話を貸してとお願いしても、誰も貸してくれなかった。
というか、勝手に誰かに連絡をしないように、監視されているようなふしもある。
常に傍に人が居て、隙を見て屋敷を抜け出すのも難しくなっていた。
あとどのくらい、この肉体に入っていられるか日々不安が増して。
俺は恐怖を覚えていた。
どうしたのか、と眺めていると、キタムラさんからスマホのバイブ音が聞こえた。
直前までフリーズ状態だったのに、習慣なのか、彼がスマホを取り出すのは早かった。
大人しく待っていると、電話が終わってからキタムラさんが言う。
「ぼっちゃん、大野さんにお会いになりたいですか?」
「さとしくんからデンワだったの?
かわってほしかったなぁ……」
俺がやんわり言うのに、首を左右に振る。
電話はぶっさんからだったらしい。
キタムラさんは何とも言えない表情で俺を見てから、今日、ぶっさんと智君が病院にお見舞いに来る、と教えてくれた。
「うん、あいたい! ぼくも行くっ」
かしこまりました、とキタムラさんは言ったのに。
出掛ける支度をしてマフラーを首に巻いたところまでは記憶にあるけど、車が玄関に来るのを待ってるうちに意識がぷっつりと途切れて。
次に目が覚めた時には外は真っ暗になっていた。
キタムラさんにどうして病院に連れて行ってくれなかったのか、と訊いたら、俺が眠ってしまって起きなかったからだ、と言われた。
それから。
だんだんと、タツオミ君の肉体に入っていられる時間が短くなった。
いつの間にか眠ってしまっているようで、何かをしている最中でもフッと意識が途切れる。
気がつくと何時間も経っていて、今がいつなのか全く分からなくなるから、とにかく目の前にいる人に時間と日にちを何度も訊いた。
教育が行き届いているのか、あからさまに不審そうな顔をする人はいなかったけれど、屋敷で働く人とも会話が繋がらなくなってきてる。
智君に連絡しようとしているのに、俺が起きている時間が定まらないから中々タイミングが合わない。
そもそもタツオミ君は補聴器を使っているくらいだから、電話にあまり縁のない子供だ。
一日の殆どを屋敷の中で暮らす生活をしているし、必要がないから、当然、携帯電話の類は持たされていない。
智君の仕事中に連絡するのはキタムラさんが良い顔をしないし、こっそり別の人に電話を貸してとお願いしても、誰も貸してくれなかった。
というか、勝手に誰かに連絡をしないように、監視されているようなふしもある。
常に傍に人が居て、隙を見て屋敷を抜け出すのも難しくなっていた。
あとどのくらい、この肉体に入っていられるか日々不安が増して。
俺は恐怖を覚えていた。