冬のニオイ
第23章 サーカス
【智side】
「えっ?」
予想してない質問だったから、オイラは思わず訊き返してしまう。
風邪で寝込んだ後は急に忙しくなって。
潤と顔を合わせる機会もあったけど、翔くんのことはあえてオイラから言う必要もないと思っていた。
というか、なんて言えばいいのか言葉が見つからなくて話せなかった。
「その人って智が昔付き合ってた人なんでしょ?
会ってみてどうだった?」
何故だろう。
潤は笑ってるのに、どこかヒヤリとする。
何かキツイことを言われる予感がして下を向いた。
「どう、って言われても……話が出来るわけじゃないからね……」
「ああ、じゃぁ、まだ意識が戻ってないんだね」
潤がコーヒーカップをソーサーに戻す音がやけに大きく聞こえた。
オイラの返事を期待してなかったのか、そのまま溜息交じりに続ける。
「智さぁ、その人の意識が戻るまで待てるの?」
まるで理解力の乏しい子供に言い聞かせるような口調だった。
「え?」
確信を突く問いに驚いて視線を上げると、潤の顔はやっぱり笑ってるように見える。
でもこれは、偽りの笑顔だ。
「その人、智に気がつかないまま、ずっと目を覚まさないかもしれないね」
ほら、やっぱり。
当たり前だ。
本気で付き合って欲しいと言われて。
考える時間が欲しい、なんて言ってさんざん待たせて。
結局は断った上に、その後も潤の優しさに甘えてた。
何もなかったみたいに仕事上の付き合いだけしてるオイラのことを怒ってる。
謝った方が良いんだろうけど、それこそ傲慢だ。
多分、逆なでしてしまうだろう。
「教えて。
智は、このままずっと、一生その人が目覚めるのを待つの?
その人は身動きも出来なくて、話も出来ない。
この先、あなたに辛いことがあっても、助けることも出来ないのに?」
「……潤」
話をする潤の顔から笑みが徐々に消えていって、やがて無表情になった。
今まで見たことがないような冷たい視線が、オイラを見ていた。
「えっ?」
予想してない質問だったから、オイラは思わず訊き返してしまう。
風邪で寝込んだ後は急に忙しくなって。
潤と顔を合わせる機会もあったけど、翔くんのことはあえてオイラから言う必要もないと思っていた。
というか、なんて言えばいいのか言葉が見つからなくて話せなかった。
「その人って智が昔付き合ってた人なんでしょ?
会ってみてどうだった?」
何故だろう。
潤は笑ってるのに、どこかヒヤリとする。
何かキツイことを言われる予感がして下を向いた。
「どう、って言われても……話が出来るわけじゃないからね……」
「ああ、じゃぁ、まだ意識が戻ってないんだね」
潤がコーヒーカップをソーサーに戻す音がやけに大きく聞こえた。
オイラの返事を期待してなかったのか、そのまま溜息交じりに続ける。
「智さぁ、その人の意識が戻るまで待てるの?」
まるで理解力の乏しい子供に言い聞かせるような口調だった。
「え?」
確信を突く問いに驚いて視線を上げると、潤の顔はやっぱり笑ってるように見える。
でもこれは、偽りの笑顔だ。
「その人、智に気がつかないまま、ずっと目を覚まさないかもしれないね」
ほら、やっぱり。
当たり前だ。
本気で付き合って欲しいと言われて。
考える時間が欲しい、なんて言ってさんざん待たせて。
結局は断った上に、その後も潤の優しさに甘えてた。
何もなかったみたいに仕事上の付き合いだけしてるオイラのことを怒ってる。
謝った方が良いんだろうけど、それこそ傲慢だ。
多分、逆なでしてしまうだろう。
「教えて。
智は、このままずっと、一生その人が目覚めるのを待つの?
その人は身動きも出来なくて、話も出来ない。
この先、あなたに辛いことがあっても、助けることも出来ないのに?」
「……潤」
話をする潤の顔から笑みが徐々に消えていって、やがて無表情になった。
今まで見たことがないような冷たい視線が、オイラを見ていた。