冬のニオイ
第25章 愛を歌おう
【翔side】
「ごめんね、すぐには気づかなかったの。
5210でやっとわかって、凄くびっくりした」
そうだよね。
俺も、自分でも信じられないと思うもん。
事故で子供の体に入ったなんてさ。
言ってもきっと信じてもらえない、って気持ち、身をもって味わったよ。
口に出すのが億劫で、心の中だけで返事をした。
俺はなんとか口角を上げて見せる。
「翔くん、眠い? 大丈夫?」
うん、って頷いて返事をして。
口を動かさなくちゃ、と思う。
「さとしくん、オレね……。
もしかしたら、もうもどれないかもなんだ」
「え?」
「タツオミくんのからだにも、自分のからだ、にも」
「翔くん?」
肩を抱く智君の腕に力が入る。
「でも、また会えて、うれしかった……」
「翔くん、どういうこと?
翔くんは、ちゃんと目を覚ますんでしょ?」
目蓋が下がるのを必死にこらえて、智君を見上げた。
でも、視界に霞がかかってるみたいで。
「オレ、ほんとうのジブンで、さとしくんにまたあえるのかなぁ……」
「翔くん、どうしたの?
ちゃんと目を覚ましてオイラと会うって言って」
うん。
でもね、俺にもわかんないんだよ、智君。
瞬きの間隔が長くなってるのが自分でも分かるけど、目蓋が閉じてしまうと中々開かないんだ。
「さとしくん、オレのたんじょうび、びょういんに、こられる?」
「誕生日? 25日だね?
うん、行くよ。必ず行く」
声が不安そうだから笑って見せたつもりだけど、笑えてるかなぁ。
駄目だ、もう目を開けていられない。
「もどれるように、よんで、ね」
「うんっ、わかった。わかったよ」
目を閉じて言ったら、強く抱きしめられた感触があった。
「オレ……めがさめ、た、ら……」
「うん」
目が覚めたら、貴方をきっと抱きしめるからね……。
ああ、このコート。
「さと、くん、の……ニオイ、する……」
俺の大好きな、貴方のニオイ。
「翔くん?」
許してもらえて。
抱きしめてもらえて。
何て幸せなんだろう。
「翔くんっ!?」
こんなに幸せでいいのかな……。
智君……愛してる……。
「ごめんね、すぐには気づかなかったの。
5210でやっとわかって、凄くびっくりした」
そうだよね。
俺も、自分でも信じられないと思うもん。
事故で子供の体に入ったなんてさ。
言ってもきっと信じてもらえない、って気持ち、身をもって味わったよ。
口に出すのが億劫で、心の中だけで返事をした。
俺はなんとか口角を上げて見せる。
「翔くん、眠い? 大丈夫?」
うん、って頷いて返事をして。
口を動かさなくちゃ、と思う。
「さとしくん、オレね……。
もしかしたら、もうもどれないかもなんだ」
「え?」
「タツオミくんのからだにも、自分のからだ、にも」
「翔くん?」
肩を抱く智君の腕に力が入る。
「でも、また会えて、うれしかった……」
「翔くん、どういうこと?
翔くんは、ちゃんと目を覚ますんでしょ?」
目蓋が下がるのを必死にこらえて、智君を見上げた。
でも、視界に霞がかかってるみたいで。
「オレ、ほんとうのジブンで、さとしくんにまたあえるのかなぁ……」
「翔くん、どうしたの?
ちゃんと目を覚ましてオイラと会うって言って」
うん。
でもね、俺にもわかんないんだよ、智君。
瞬きの間隔が長くなってるのが自分でも分かるけど、目蓋が閉じてしまうと中々開かないんだ。
「さとしくん、オレのたんじょうび、びょういんに、こられる?」
「誕生日? 25日だね?
うん、行くよ。必ず行く」
声が不安そうだから笑って見せたつもりだけど、笑えてるかなぁ。
駄目だ、もう目を開けていられない。
「もどれるように、よんで、ね」
「うんっ、わかった。わかったよ」
目を閉じて言ったら、強く抱きしめられた感触があった。
「オレ……めがさめ、た、ら……」
「うん」
目が覚めたら、貴方をきっと抱きしめるからね……。
ああ、このコート。
「さと、くん、の……ニオイ、する……」
俺の大好きな、貴方のニオイ。
「翔くん?」
許してもらえて。
抱きしめてもらえて。
何て幸せなんだろう。
「翔くんっ!?」
こんなに幸せでいいのかな……。
智君……愛してる……。